東光西風(2026.10)

読み書きで脳を活性化

読解力や論理的思考力を鍛えよう

昨今、読書離れが進んでいるとの報告があります。SNSや動画などのデジタルメディアへのシフト。また、仕事、家事、勉強などが忙しくて、時間が取れないといった理由で、読書の優先度が下がっています。

教科書のデジタル・アナログ論争

北欧・スウェーデンはデジタル化を国家戦略としており、世界有数のデジタル教育国でした。しかし現在、その方針を転換しています。デジタル教科書から紙の教科書へと回帰しているのです。理由の一つとして、読解力の低下を挙げています。

OECDによる学習到達度調査(PISA)で、スウェーデンは読解力の低下に直面していました。専門家は、「モニターやタブレット上での読書は、情報を流し読みする傾向が見られ、理解の妨げになっているのではないか」と分析したそうです。また、「手書き」による脳への刺激不足も挙げられています。文字を書かないことで、基礎的な学習能力や記憶の定着に悪影響が出ているそうです。

結果として、心身が成長する時期の幼い子どもたちには、デジタルの利便性より、アナログの紙と鉛筆から得られる学びを優先する、という考えに至りました。

一方、日本では2024年度から小学校高学年を中心にデジタル教科書の導入が始まりましたが、スウェーデンのような「全面移行」ではありません。政府が学校教育法改正を通じて「紙」「デジタル」「ハイブリッド」の3種類を正式な教科書として位置づける方針を示しています。日本はデジタル化の動きが出遅れたことで、北欧諸国の政策を参考にすることができます。利便性のみに捉われて一気にデジタル化を推し進めるのではなく、子どもの発達状況に合わせた使い分けを進めてほしいものです。

読書離れやAIの弊害を危惧する

教科書に関わる争点は「デジタルか、アナログか」でしたが、紙・電子などの媒体に限らず、読書離れが進んでいることが世界中で言われています。紙・電子を問わず本を読む頻度や冊数が減少し、特に日本の文化庁の調査では、「月に1冊も本を読まない人」が6割超に達しているとの報告があります。

読解力は国語で本を読むことと結びつけて考えられがちですが、論理的思考力の土台となる力だと言われています。文章やデータを読解することは、その意味するところを論理的に捉えて、頭の中で整理することになるのです。

読むだけでなく、書くことの大切さもあります。書くことで「見える形」になるので、感情や思考が整理でき、心が安定します。そして、自分を客観視することができるので、成長にも繋げられます。また、自分の言葉でまとめて書くと、ただ読むだけ・聞くだけよりも記憶の定着や理解を深められるといった利点もあるのです。

書くことについては、最近はAI利用の是非が取り沙汰されます。AIは仕事が軽減するメリットの一方で、弊害もあるのです。

ある研究で、①生成AIを使って小論文を書かせ、その後、自分の頭だけを使って、その小論文を書き直して完成させる。②自分の頭だけを使って小論文を書き、その後、生成AIを使って小論文を書き直して完成させる、という実験をしました。

実験結果は、①の場合は最後に自分の頭だけを使っても、脳活動や意欲、集中力は停滞したままでした。また完成した小論文のレベルも低いままでした。ところが、②の場合は自力で書き上げた後に、生成AIを利用することで、脳の活動がさらに活発になり、完成した小論文のレベルも一層上がった、というのです。

書くことを苦手にする人は多いですが、それでも、最初から生成AIに頼るのではなく、まずは自分で構成を練り、苦労して書いた後にAIを利用するほうが、脳の活性化や知性を高めるには良いということになりそうです。

人間性を豊かにする「智」

人間性を高めるための実践徳目に、儒教の三綱五常の「五常」(仁・義・礼・智・信)があります。その中にある「智」は、「知識を広く求めて、知性を高め、英智に基づく判断をする」と表現できます。この「智」を養うことが人間性の涵養につながるということです。読解力や論理的思考力などを鍛えることは「智」を養うことになるので、豊かな人間性を具えることになります。

このように読み書きを通して「智」を具えることが、私たちの人間性と密接に関連していることを理解し、これを生活に取り入れ実践できれば、豊かな人間性を育むことに繋げることができると思います。

(宗方弘信)