診療室から Vol.35 コンタクトレンズ

目の負担の軽減から週1で「目の日曜日」を

目の障害の多発で、コンタクトは
高度管理医療機器に指定される。

 入学や就職に際して、また、スポーツをするなどの理由でコンタクトレンズ (以下CL)を使い始める人が多いと思います。ご存知のように、CLは目の表面を覆い、そのCLの厚みでその人に適切なレンズに合わせています。眼鏡と同じ度数ではありません。  
 数年前にCLによる目の障害が多発し、眼に直接触れる視力改善の医療器具として、心臓のペースメーカーと同様に厚生労働省によって、「高度管理医療機器」に指定されました。そのため、資格者による販売管理・指導が必要になり、厳しい体制となっています。  
 また、度数の入っていない美容上や遊びで使うカラーコンタクトレンズも、発がん性の色素(日本で未認可)を使った商品がネット販売や医師のいない量販店で出廻り、その色素が溶出して目に悪影響を及ぼすなどで問題になりました。
 そのため、国は家電製品などの商品の管轄の経済産業省から、医療器具の管轄の厚生労働省に管理が移り、現在では、度数のあるCL同様の医療機器の指定をされています。

コンタクトはハイヒール。登山は無理。
眼鏡は運動靴。視力矯正の基本。  

 CLを載せる角膜は、虹彩(こうさい)(茶目)の前にある透明なレンズです。光は角膜と水晶体というレンズで曲げられ、フィルムである網膜に像を結びます。そのため角膜は透明でなければならないので、人間の体の中で血管のない唯一と言っていいくらいの組織です(爪・毛以外)。  
 そこで、栄養分は空気中の酸素と涙から得ています。その涙は、まばたきすることで新しくされ、表面の老廃物を受け取り、目が乾いて濁りが出ないようにしています。ですから、CLで覆うと角膜は、涙不足や酸素不足になり、充血しやすくなります。  
 CLは医学的には、その光学的な特徴から強度の近視・遠視・乱視・不同視(左右の度数が極端に異なる)などの人の視力矯正に優れています。しかし、安全なCLも使い方を誤ると角膜に傷をつけます。ですから、眼鏡で視力が出れば、そのほうが良いかもしれません。  
 また私は、どんなに良いCLでも、利便性と目の負担を考えると、平均12時間程度で外すのが一番良いと患者さんに説明しています。  
 角膜は、CLを外している時には角膜の表面に涙が行き栄養が行きわたります。空気に触れると酸素をもらい、眼の表面が元気になります。  
 簡単に考えると、寝ている時は眼を閉じてまばたきをしていません。6時間寝るとして、生活時間は18時間です。CLを2時間外した場合、1時間当たりで8時間の負担を取ることになります。しかしそれは難しいことです。  
 4時間外すと3・5時間。6時間外せば1時間当たり2時間の負担になります。この12時間程度なら、長い年月CLを使用しても大きな障害は起こし難いと考えられています。  
 患者さんに、「CLはハイヒールみたいな物、よく似合っていても山登り(長時間装用)には適しません。眼鏡は草履、運動靴のようなもので、視力矯正の基本です」と話します。  
 また、できれば負担を減らすために、「目の日曜日」を週1回取ることを勧めています。そうすれば、「長期間使っても眼の障害を起こすことはほとんどなく、楽しく使えますよ」というように説明しています。  
 実際は美容上の理由で使用することがほとんどですが、CLが眼鏡より優れている点は、枠が気にならず、広い視野を保てることです。また、サッカーやラグビーなどのように、体がぶつかり合う激しいスポーツをする場合にも適しています。  
 しかし、CLは眼の表面に直接載せるため、充血や眼痛が起きたり目やにが出ると、眼科医にCLの使用を一時中止するように指導される場合があります。その時に眼鏡を持っていなければ不便な状態になります。  
 また、災害時に手を洗う水道が止まり、困った人が多数出たとの報告もありますので、CL中心にしても、必ず眼鏡は定期的に合わせておきましょう。

コンタクトは短期問で楽しむ程度。
長期問は医師による定期健診を。  

 レンズには大きく分けて、ハードレンズ(HCL)とソフトレンズ(SCL)があります。  
 HCLは、直径約9ミリの樹脂でできています。角膜のカーブを測り、そのカーブに合ったレンズを装着し、顕微鏡で角膜上でのレンズの動きや、入り方を診ながら医師が処方します。違和感があり、また処方が少し難しいので最近は1割以下に減っています。  
 長所としては、取り扱いが簡単で数年の使用が可能ですし、海外旅行などにも荷物になりません。欠点は激しいスポーツには向かず、購入後に馴(な)れるまで、約2週間程度は違和感があります。良い物なのですが、今の社会では少数派になっています。  
 SCLは柔らかいレンズで、直径約14ミリの水分を含んだスポンジのような樹脂でできています。柔らかいため異物感が少なく、また、目を覆う面積が広いために外れ難いレンズです。しかし、覆う面積が大きく、また装用感が楽なため使用時間が長くなりがちで、目に負担がかかることも事実です。乱視対応のレンズもあり、以前よりは適応範囲が広くなってきています。  
 欠点としては寿命が短く、洗浄・消毒が必要です。スポンジ状の素材特性から、涙の中に含まれる栄養分がしみ込むために、細菌やカビが育ちやすく、洗浄・消毒の手順のいずれかを省くとレンズの寿命を短くするばかりでなく、病気の原因にもなり、危険性が出てきます。  
 そのため日本では使い捨てのSCLが主流です。定められた期間以上の使用は眼に負担をかけますので止めてください。  
 日本では茶目を大きく見せるコンタクトが流行(はや)っていますが、どうも日本だけの流行のようで、充血が判り難く、外す時間が遅れる人もいます。  
 数年前より遠近両用のCLが発売されています。中高年の人に広まりつつありますが、しっかりピントが合うことをあまり望まない人にはお勧めです。運転や長時間コンピューターを使用する人などには、疲れが出やすいでしょう。  
 最後に、CLは目の状態を診て作る医療器具です。また、度数やカーブは年齢と共に変化していきます。作り直す場合でも、必ず検査を受け、処方してもらって下さい。  
 中学生・高校生は成長期ですので、ピントを合わせる力や度数も変化しやすく、また、試験などの時に夜更かしをすると涙の量が減り障害を起こすことがあります。管理面も不十分なことが多いので、眼鏡中心での生活のほうが良いと思います。  
 また、長年の使用で、気づかずに角膜に障害を起こしている人がいます。ですから、眼科医のいる医院で定期検診を受けると共に、処方してもらうほうが望ましいでしょう。  
 CLを短時間装用で楽しんでみてはいかがでしょうか?


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