診療室から Vol.05 インフルエンザ

新型インフルエンザも予防法は風邪と同じ

インフルエンザを大別すると
A型、B型、C型の3種類が。
 今回は多少時期も過ぎましたが、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザについて、現在分かっていることをまとめてみます。
 「先生、風邪や! ちゃんと予防接種していたのに、効かへんな」と駆け込んで来る人が毎年何人かいます。そうです。風邪はインフルエンザではないので、インフルエンザワクチンは無効です。  
 インフルエンザは、インフルエンザウイルスがもたらす病気で、毎年11月~4月に流行を繰り返し、咳(せき)やくしゃみで空気中に飛んだ飛沫(ひまつ)によって人から人へうつります。そのため家族、職場や学校など周囲へ拡大するので、マスクやうがいによる予防が大事になります。  
 インフルエンザは風邪と同様の鼻汁、くしゃみ、咳などの症状のほか、しばしば40度前後の高熱、頭痛、関節痛、全身倦怠感(けんたいかん)などを伴います。  
 通常は約1週間程度で治りますが、高齢者は肺炎を合併したり、乳幼児はインフルエンザ脳症になるなど、時に重症化します。いずれも早めに医師にかかることです。  
 インフルエンザウイルスの表面は蛋白質(たんばくしつ)の粘液に覆われ、細胞に浸入するための突起がついています。この突起の形の違いで大きくはA型、B型、C型の3つに分類されます。  
 この中でA型が最も感染力が強く大流行を引き起こし、Aロシア型、A香港型が代表的です。またA型の特徴としては、人以外のトリ、ウマ、ブタなどの動物に感染することです。  
 B型、C型は人間にしか感染しないインフルエンザウイルスで、一般的にB型はA型ほど大流行しません。さらにC型は、症状はほとんどなく感染したことに気づかない場合も多いです。

人類は、新型インフルエンザの
抗体がないため易感染の予測が。  
 ここ数年来、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザの報道が多くなりました。まずは鳥インフルエンザを説明しましょう。  
 先に記したようにA型インフルエンザは動物に感染し、それが何らかの変化が生じて人にうつることがあります。’97年、香港で「H5Nl」といわれる鳥インフルエンザがヒトに直接感染しました。年を経てその後東南アジアからアフリカにかけて感染し、死亡者も出ています。  
 この感染の特徴は、多くは病鳥、死鳥との接触歴がある若い人で、多くの人が4日から3週間程度で死亡しています。しかしこの場合、彼らにインフルエンザ治療薬が施されておらず、発症すれば恐い病気ですが、早期にインフルエンザの薬を投与すれば治癒(ちゆ)の可能性はあると考えられています。  
 新型インフルエンザとは、鳥インフルエンザなど、動物→ヒト感染を起こしたウイルスが変異し、ヒト→ヒト感染を起こすようなウイルスをさします。  
 メディアですさまじい数の感染予測、死亡予測が報道されています。しかし過去にも新型インフルエンザは何回か発生し、「パンデミック」といわれる世界的大流行を起こしています。’18年のスペイン風邪、’57年のアジア風邪、’68年の香港風邪などがそうです。  
 ヒト感染を生じた鳥インフルエンザが、いつ、ヒト→ヒト感染を起こす変異をするか分からないことから、準備の必要性が求められています。その可能性大なのがH5Nl型ですが、他の型であることも否めません。  
 新型インフルエンザは出現すると、感染速度は季節性インフルエンザの2倍程度といわれ、ピークは初発例感染後18日目くらいと予想されています。  
 今まで流行した季節性インフルエンザとはタイプが異なるため、人類は抵抗力(抗体)がなく、感染すると重症化、易感染が予測されます。

世界的大流行した場合は、
正確な情報の元に行動を。  
 次に予防法、治療法について説明します。  
 一般的に、インフルエンザに罹患(りかん)すると、約1週間の発熱が続きますが、タミフル、リレンザなどの抗インフルエンザ薬を投与すると少し短縮されます。しかし、熱が下がった後の2日間はまだ感染を起こし得るウイルスの量を排菌していますので、会社なり学校へ行くのは解熱後2日経てからとなります。
 また、ワクチンで100%感染が防げるわけではありません。毎年予防接種しても毎年感染する人もいます。しかし、そういう人でもワクチンにより症状の軽減効果がありますので、できるだけ接種をお勧めします。  
 新型インフルエンザの流行を恐れることも、無神経、無防備でいることも賢明でなく、前もって対策をして慌てないのが一番です。予防は風邪と同様です。
 感染の基本は飛沫なので冬場、特に人ごみではマスクをして、外出から帰れば必ずうがいをする。免疫力アップのため睡眠不足を避ける、禁煙、節酒、適度な運動で体を鍛えておくことが大切です。また室内の換気を行ない、保温、保湿に努め、さらに予防接種を受けて下さい。  
 特に肺疾患、心疾患、腎疾患、糖尿病などの病気のある65歳以上の人は、ワクチン接種が強く望まれます。  
 鳥インフルエンザの最大の予防は、特に東南アジア、中国、アフリカへの冬の渡航を控えること、渡航したら鳥には触れないことです。その他はインフルエンザの予防と同様です。  
 ワクチンは、H5Nl型に対して製造されていますが、実際にどのタイプが発生するかは分かりません。パンデミックワクチンは発生後に作成しますので時間がかかります。  
 なお、インフルエンザ薬のタミフル、リレンザなどは、新型インフルエンザにも効く可能性があり、国レベルで現在備蓄がなされています。  
 そこでパンデミックした場合を想定し、感染の拡大を防ぐために、国、地域ぐるみで発生地帯での外出の自粛などの徹底があがっています。情報におどらされず、あなどらず正確な情報を得るようにすることです。  
 特に在外邦人は感染症のニュースに注意し、発生時には早期帰国、あるいは渡航を延期し、落ち着いて適切な行動をとるよう、普段から会社ぐるみでシミュレーションしておくことです。  
 最悪感染した時には、正しいルートで病院から薬を処方してもらい、内服、安静に努め、うつさないように閉じこもることです。高齢者など、入院が必要な場合は落ち着いて病院選定をして入院するなど、それぞれのケースに基づいての行動が求められます。  
 新型インフルエンザは、いつ発生するか不明であること、発生した時の準備を、とにかく普段からしておくことが大切と思われます。


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